人気ブログランキング | 話題のタグを見る

昔の話

テレビで、アメリカの美人女優が人生はジェットコースターのようなもんだと言っておりました。
僕の人生はデパートの屋上などによくある子供用のパンダの乗り物のようなものですよとテレビに話し掛けてしまった。ああ、話し掛けてしまった。

ああ、本を3冊も買ってしまった。お金もないのに。でもものすごい幸せな気分です。本屋に入ったら止まらなくなってしまった。しょうがない。服買うのあきらめよ。

最近昔の事を思い出す。大阪にいた頃、梅田の地下アーケードの出口の側で年末ジャンボの警備員のバイトをしてた時、山田のおっちゃんという家のないおじさんと知り合った。
警備服を着て立っていると、何やかんやと大声で話し掛けてくるおじさんは、警備員の間では嫌われていた。みんな大概無視していたのだが、なんか少し可愛そうに思った心やさしい王子様のような僕は「おっちゃんなにして食べてんのん?」と話し掛けた。さあ、大変。それから20分おじさんは大声で僕に話し掛け続けた。半分以上何を言ってるのかわからなかったのだが、通りすがる人たちの目には、僕が絡まれてると映っただろう。そのことが恥ずかしくて僕はなるべく愛想よく、しかし警備員らしく応対をして見せた。潤んだ目と、ほとんどない黄ばんだ歯を見せて大声でしゃべるオッちゃんは、普段拾いやというダンボールを集める仕事をしている事、それによって1日200円をもらってる事、時には仕事先から与えられてるぐちゃぐちゃの自分の昼ごはんまで見せにきてくれた。それでも少々わずらわしくなってきた心やさしい僕は、「おっちゃんなんでそんなんなってもうたん?」と単刀直入に聞いた。「博打や、バクチ。息子からも縁切られてもうた。」といたって素直に話してくれた。「やめられへんかったんか?」若い僕はあまりにも若い言葉を吐いた「やめられへんかったなー。」明るく答えたオッちゃん。さすがの若い青い果実な僕も「後悔してないのん?」とは聞けなかった。
それからも警備場所の配置が移っても僕を見かけると大声で話し掛けていたおっちゃんだったが、少し気を使い出したのか、雇い主におこられるのか、あまり長い時間は話さなくなった。

やがて暮れも押し迫り、最後の仕事を終え、仲間と帰る道すがら地下から昇ってきた山田のおっちゃんと出会った。けれど山田のおっちゃんは私服に着替えた僕のことに気づかず、誰かを探しているようだった。なぜか声をかけられなかった僕は気づかないふりをして、友達と真っ直ぐ駅に向かった。一瞬僕の声を聞いて、気づいた風だったけど僕はそ知らぬふりで通り過ぎた。しばらくあるき振り返ると、寒空の広がる大阪の町でおっちゃんの黒い影がたたずんでいた。その姿は誰かを探しているようだった。「死ぬなよおっちゃん。」心の中で僕はつぶやいた。

by biritake | 2005-05-10 00:25  

<< Far From Heaven 退屈ジーダボー >>