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幕は下りない・・・総括

三鷹での打上げが終わり、新宿で飲みなおすという猛者たちとはぐれた朝方、ひとり新宿へ向うべく電車に乗ったのだが気が付いたら、三鷹に到着する電車になっていた。どうやら津田沼まで行って折り返してきたらしい。かれこれ2時間がたっている。呆然としながらそのまま新宿へ行く気力を無くし家路に就いた。幕は下りないの幕はこんな形で幕を下ろした。なんとも締まらない終わりだ。自分らしいとは思うのだが。

前回公演「池袋モンパルナス」で主人公が最後に言った言葉、「魂をみせてやるぜ。」この言葉が今回の作品を作る発端となりました。役者を辞めた男が、その復活の際にはいた言葉です。
役者魂とはなんだ。これがテーマの一つとなりました。とかく役者はこの国ではまだまだ地位が低く、なかなか認めてはもらえない人種のような気がします。
無駄な事をしているのではないか。いつも僕の胸にはそんな思いがよぎります。
役者になろうと勉強をはじめた時、仲間とよく話していたのは、何の生産性もない職業なんだという事でした。芝居を観て、おなかが一杯になるわけではなく。温かくなるわけでもない。そんな生産性のない世界で、僕達はなにを生み出すのか。どこにその価値があるのか。当時は必死にそんな事を考えていました。あれから20年。いまだに僕の心にはその思いがあります。
はっきりとした答えはまだ見つかりません。ひょっとしたらそれを追い求めていくことが答えなのかもしれないと、何となく思っている程度です。
今回稽古中に役者に何度となく叫びました。もっと芝居を愛してくれと。子供のとき大好きな女の子とおままごとを真剣にやっていたときのような、純粋な気持ちを呼び覚ましてくれ。
そう叫びました。チラシの裏面に乗っている写真の意味はそこにありました。
所詮はごっこなんだと、ずーっとごっこをしているのだと。そのごっこの向こう側にある、リアルを越えた世界に役者の魂があるのではないかとそう考えました。

もう1つは現実とは何かということです。今回は劇中劇でした。その劇団が劇に取り組んでいる時その劇は劇中の中の人物にとっては現実ではない。現実は稽古の中にあります。しかしその稽古も、台本という世界の中で描かれているもの。そして最後に、劇中劇の作家であろう人間が、超現実の中にあらわれ、その男の行動を台本にしたためています。
夢と現実。そこにはいかなる隔たりがあるのだろう。それを見つめてみたかった。
現実が夢で、夢が現実であるならば、演じている劇中劇が実はすごい現実なのかもしれないと思うのかもしれない。そんなはずはない。台本の世界なのだ、台本の世界なのだから、台本を書いてるところが現実なのだ。しかしそれも破られた。破られたと感じる私たちの今は、現実なのか?そんな風に皆さんに考えてもらいたかった。
まだまだ力不足でそこまでは、感じられなかったと思われるかもしれません。しかし一時でも魔法という世界を信じた時、明らかにその瞬間皆様が夢の世界にそまり、そして舞台上が現実となる。それはそこに魔法の世界が生まれたといううに他ならない。僕はそう考えました。
ご来場いただいたあの瞬間あの時だけは、確かに魔法の島が存在したのだ。少しでもそう思う時間を延ばすべく、これからも精進し続けます。

by biritake | 2005-11-16 22:26  

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